住宅ローンを知ろう > 十文字先生の税務講座2007−相続問題は、誰にでも関係がある

相続問題は、誰にでも関係がある
「相続税は、資産家だけにかかるもの」「うちには大した財産なんかないから、相続問題なんて関係ない」と思っている人が多いかもしれません。でも、本当に相続税がかからないか、はっきりしていますか。あるいは、税金がかからなければ、何も手続きをしなくてもいいと思っていませんか。意外に知られていない、“相続問題”の注意点を紹介しましょう。
【十文字良二】十文字会計鑑定事務所、税理士・不動産鑑定士
情報提供日/2007年9月26日
財産はプラスとは限らない。隠れ借金や保証債務に要注意

 日本で相続税がかかるケースは、全死亡者のうち5%程度といわれます。ほとんどの人は、自分には関係ないと思っているのではないでしょうか。しかし、相続問題は、税金がかかる時だけに発生するわけではありません。税金がかからなくても、相続をめぐって様々な影響が出てくるのです。
 そこで、あなたの財産に「相続税がかかるのか、かからないのか」「相続税がかかるとしたら、いくら払わなければならないのか」について、2回に渡って考えてみたいと思います。

図1.相続税に関わる財産の種類

 税金の計算方法に入る前に、まず、親が亡くなった時に配偶者や子どもなどの相続人が、どんな財産を相続するかを整理しておきましょう(図1参照)。
 亡くなった人(被相続人)が残す財産には、不動産や株券、預貯金、宝石、書画骨董などがあります。その他、著作権や特許権など、形のない権利も相続財産です。みなさんが“遺産”という言葉からイメージする項目でしょう。

 ここまでは誰でも思い当たる範囲かもしれません。注意したいのは、プラスの価値があるものばかりではないことです。借入金や連帯保証の義務までも相続されることはご存じでしたか。
 親が自分でこしらえた借金ならまだしも、他人の借金の保証人まで相続するなんて納得できないと思うかもしれません。ところが法律上は、後述する「相続放棄」などの手続きを取らなければ、自動的に相続を承認したことになってしまうのです。

 ですから、まず何が相続財産になるのかをしっかり頭に入れておき、プラスもマイナスも含めて、生前からきちんと財産目録を整理しておくことが大切です。
 なお、金銭価値に換算できない「身元保証人」などは相続されません。被相続人の資格や生活保護需給権など、本人の一代限りの権利とされる「一身専属権」も相続できません。いわゆる有料老人ホームなどの「終身利用権」も同様です。

 この他に、本来の相続財産には含まれませんが、税法上は課税遺産として扱われる「みなし相続財産」があります。親が契約して保険料を支払い、子どもが受け取り人になっていたような生命保険金や損害保険金、退職手当金・慰労金などです。これらは次回の相続税の計算編で、扱い方について説明します。

アッという間に過ぎる、相続手続きのスケジュール

 次に、相続にかかわる手続きのスケジュールについて解説します。これも意外に知られていないことですが、相続人にとって大きな影響が出ることですから、ポイントを覚えて置いてください。

 すべては「相続開始」からスタートします。ある日突然、親や配偶者が亡くなると、その日から後戻りできないスケジュールが待ったなしで動き出します。通夜や告別式、初七日などの法要は、周囲に助けられながらも儀式として滞りなく進んでいくもの。相続うんぬんのことなど忘れている人も多いでしょう。しかし、四九日が終わってから、わずか1カ月で、最初の関門が訪れます。

図2.相続開始後のスケジュール

 前述した「相続放棄」をするかどうかは、相続開始から3カ月以内に決定して、家庭裁判所に申述しなければならないのです。
 相続放棄というのは、被相続人の債権・債務・権利・義務のいっさいを放棄して相続人でなくなること。プラスの財産を受け取れない代わりに、借金や義務からも解放されます。複数の相続人がいる場合でも、相続人がそれぞれ自分で判断することができます。
 なお、生命保険金については、受取人に指定されていれば相続放棄をしても受け取ることができます(その場合、相続税は課税されます。また放棄しているため相続人からは外れますから、生命保険金の非課税の取り扱いは受けられません)。

 借金を背負うことを避ける方法としては「限定承認」という手続きもあります。これは、相続で受け取った範囲内で、被相続人の債務などを弁済する義務を負うこと。借金の内訳が不明の場合などに有効とされます。後で借金が少ないことがわかれば、プラスの財産が残るわけです。ただし、相続開始から3カ月以内に相続人が全員一致で合意すること、また財産目録の作成や債権者への公告などの手続きなどが必要です。現実には適用できるケースは少ないでしょう。

 いずれにしても、被相続人が亡くなって3カ月という期限までに、「相続放棄」や「限定承認」をするかどうかを決断しなければならないのです。悲しみに浸っている暇はありません。それまでに遺言の有無を確認し、遺産分割協議を始めておかなければ、間に合わないのです。

 さらに、それから1カ月以内、相続開始から数えて4カ月以内に、被相続人が亡くなるまでに得ていた所得を申告して納税しなければなりません。もし、遅れると、延滞税がかかってきます。
 被相続人が消費税の課税事業者だった場合、相続人には消費税の支払い義務も発生します。こちらも申告期限がありますので、注意してください。

 ここまでは、相続税が課税されるかどうかにかかわらず、すべての人が関係する手続きといえるでしょう。
 相続税がかかる場合は、相続開始から10カ月以内に相続税の申告と納税が必要です。アッという間に時間は過ぎて行きます。事前の準備がいかに大切か、おわかりいただけたでしょうか。

 次回は、相続税の計算方法を解説します。



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