住宅ローンを知ろう > インタビュー 十文字良二氏(2)

【十文字良二氏】(2)
土地フィーバーを斬る/その2『都心住宅地は20%以上アップした地点も』
前回は2007年度地価公示の全体傾向と要因などについてふれました。今回は、地域別の動向についてやや詳しく伺ってみましょう(詳細データは最後の図1〜3を参照)。
十文字良二氏
十文字良二氏
十文字会計鑑定事務所代表・税理士・不動産鑑定士
【プロフィール】
1981年、税理士登録。88年、不動産鑑定士登録。91年、財団法人不動産近代化流通センターの講師に選任。94年、東京地方裁判所鑑定委員会委員に選任。2001年、財団法人区画整理促進機構アドバイザーに就任。日税不動産鑑定士会会員。著書に『CAP』『動物病院のファイナンシャル・プランニング』(チクサン出版社)、『月刊不動産フォーラム21』(大成出版社)、『土地の税務評価と鑑定評価 日税不動産鑑定士会編』(中央経済社)等。本サイト税務講座でも好評連載中。
情報提供日/2007年4月4日
都心商業地が軒並み40%超のフィーバー
--公示地価を地域別に見ると、どのような状況ですか。

十文字氏 まず、商業地からいいますと、やはり東京都心部の上昇が非常に大きいですね。平均18.3%のアップですが、高度商業地では20〜40%に上ります。なかでも銀座、原宿、表参道、青山などの動きが活発。上昇率全国一の渋谷区神宮前5丁目は、プラス45.5%を記録しました。

 続いて大阪市が平均15%、中心6区では20%を超えました。北区梅田1丁目がプラス43.1%で上昇率全国第4位となっています。
 名古屋も動きが大きいですね。名古屋市の平均ではプラス16.1%ですが、上昇率全国トップ10に40%を超える3地点がランクインするなど、東京に負けない上昇率を示しています。
 愛知万博の開催、中部国際空港セントレア開業に続いて、今年3月に、トヨタ自動車や毎日新聞などが入る名古屋駅前の超高層ビル「ミッドランド・スクエア」が開業するなど、人やモノの集中が起きているのが要因です。

十文字氏

 福岡市の商業地も12.9%上昇しました。福岡の業務・商業の中心地はこれまで天神周辺でしたが、2011年に九州新幹線の鹿児島中央−博多間の全線開通が予定されていまして、博多駅の周辺が活発化してきているようです。
 3大都市圏以外の地方圏では、上昇率トップ3を博多駅周辺が独占しています。博多駅前1丁目は全国第3位の上昇です。なかには路線価の7倍で取引されたケースや、変動率でいうと前年比100%アップという事例も報告されています。

 その他、札幌市、仙台市なども上昇率が拡大しました。地方都市の場合は、まだ下落を続けているところも多いのですが、次第に下落幅が縮小していますね。

住宅地もプラス20%を超えるエリアが続出
--住宅地の動きはいかがですか。

十文字氏 東京の都心住宅地も18%上がりました。東京では都心に止まらず、郊外にも波及し始めているのが特徴です。多摩地区でもすべてプラスに転じました。武蔵野市、府中市、調布市は10%弱のプラスで、いずれも商業地より住宅地の上昇率のほうが上回っています。
 都心回帰現象が進み、マンション需要が高まっているにもかかわらず、都心部にはマンション用地がなくなっているんですね。どんどん郊外に目が向いています。

十文字氏  23区内の住宅地では、都心部と南西部はすべて10%以上の上昇を示しています。なかでも中央区、港区、渋谷区はプラス20%を超え、非常に高い水準ですね。上昇率全国トップ10は、商業地と同水準の30〜40%を超えていて、すべて港区と渋谷区のスポットで占められています。

 


 新宿区、中野区、杉並区などの城西エリア、鉄道でいうとJR中央線沿線は、住宅地としての人気は高いんですが、上昇率が一桁台に止まっています。意外に低いですね。東京から南西方面に伸びる私鉄沿線に比べて新しい開発などが少ないことや、丸の内や八重洲で再開発が活発になり、商業地の中心が東京駅周辺にシフトしていることが要因といえるかもしれません。

 それから、城東・城北エリアの一部も10%以上のアップをしているところがあります。第2東京タワーの建設計画地に隣接した台東区、つくばエクスプレスの新駅が3つあり、今年度中にも開業予定の新交通システム「日暮里・舎人線」が中心を通る足立区など。やはり、新線新駅、市街地再開発などで街のポテンシャルが上がるエリアの地価は強含みで動いているようです。


--東京以外の住宅地の状況はどうでしょう。

十文字氏 やはり名古屋が高いですね。市内平均では6%台と低めですが、都心部は8〜15%と東京に次ぐ高い上昇率です。札幌や福岡も都心部では10%程度上がっています。大阪は中心6区でも5%とやや動きが鈍いですね。

ファンド・マネーが値上がり益を狙って進出
--地価が上がって利回りがかなり下がっているといわれています。それでもファンドの投資が収まらないのは何故ですか。

十文字氏 1990年代終わり頃から外資系ファンドが日本への投資を始めた頃、利回りは20%程度ありました。その後、都心部の需要が高まるにつれて地価が上がり、利回りは10%になり、5%になり、いまや3%台になっているといわれますね。従来の感覚でいえば、きわめて低いという印象は否めません。

※ここでいう「利回り」は、家賃収入から経費等を差し引いた純収益をベースにした「ネット(実質)利回り」を指す。

十文字氏

 ただ、都心部ではオフィスの空室率が下がり、新規供給もそれほど多くないために、賃料は上昇傾向にあります。新しいビルの賃料が上がれば近隣にも影響しますから、多少古くても利便性の良いところは少しずつ上がっていく。そのため将来的な収益の見通しが高くなり、利回りが回復すると見られているのです。

 また、家賃収入ベースの利回りは確かに低いのですが、売却したときのキャピタル・ゲインを考慮にいれた最終的な「ターミナル・レート(投資利回り)」で見ると、それなりの割合になるため、採算が合うという投資判断だと思います。
 同じような動きが住宅地にも広がっているのです。


--次回は今後の地価の動きについて伺います。
図1.東京圏の地域別変動率/図2.大阪・名古屋圏の変動率/図3.地方圏の変動率


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