住宅ローンを知ろう > インタビュー 十文字良二氏(3)

【十文字良二氏】(3)
土地フィーバーを斬る/その3『今後の地価の変わり目をどう見るか?』
最終回は「今後の地価がどう動くのか」「上昇に歯止めがかかるとすれば、その変わり目をどう判断するか」というテーマで、予測とヒントを伺いました。
十文字良二氏
十文字良二氏
十文字会計鑑定事務所代表・税理士・不動産鑑定士
【プロフィール】
1981年、税理士登録。88年、不動産鑑定士登録。91年、財団法人不動産近代化流通センターの講師に選任。94年、東京地方裁判所鑑定委員会委員に選任。2001年、財団法人区画整理促進機構アドバイザーに就任。日税不動産鑑定士会会員。著書に『CAP』『動物病院のファイナンシャル・プランニング』(チクサン出版社)、『月刊不動産フォーラム21』(大成出版社)、『土地の税務評価と鑑定評価 日税不動産鑑定士会編』(中央経済社)等。本サイト税務講座でも好評連載中。
情報提供日/2007年5月9日
地価上昇はまだまだ続く!?
--今後も地価は上がるんでしょうか。

十文字氏 現在の流れからすると引き続き上がって行くでしょうね。2008年の公示地価は今年の高く上がった事例をベースに評価するわけですから、当然、前年の動きを反映して上がってきます。

十文字氏  実勢価格のほうは、やはりファンドの動きがキーポイントになるでしょう。現在、東京都心の大型オフィスビルの投資利回りは平均3.5%くらいです。長期金利の指標である10年物国債の利回りは1.6〜1.8%程度ですから、まだ1.7〜1.9%のスプレッド(金利の乖差)が確保できます。ニューヨークやロンドンの投資利回りは、長期金利と同じくらいの水準まで低下して、スプレッドが限りなく0に近づいているようですから、外資系ファンドからみると日本の不動産には相対的に割安感があり、まだまだ魅力があるということでしょう。

 新聞報道によると、国内外のファンドが保有する不動産残高は既に15兆円近くに達するそうです。さらに、米国のモルガン・スタンレーが最大2兆円の投資を予定しているなど、外資系ファンドの動きは相変わらず活発です。しばらくはこの傾向が続くのではないでしょうか。
住宅価格にも波及するのは必至
--住宅地やマンション価格などはどうですか。

十文字氏 商業地が上がれば住宅地へ波及するのは必至です。都心商業地から都心住宅地へ、さらに利便性の高い郊外へ地価上昇の波は広がります。マンション価格も都心部を中心にかなり上がり始めていますね。
 マンション用地を仕入れてから1〜2年後に販売されるのが一般的です。現在の地価が上がっているわけですから、このまま状況が変わらなければ、1〜2年後に出るマンションもほぼ確実に値上がりすると見ていいでしょう。

 2006年に大手デベロッパーは軒並みマンションの売り出しを控え、供給調整をしました。販売を先延ばしにしたほうが値上がりすると判断しているからです。また、開発したマンションを分譲せずに賃貸に回していくデベロッパーも増えています。この動きは、住宅価格の動きを反映して住宅の家賃も上昇すると見られているからでしょう。 十文字氏

--しかし、このまま価格が上がり続け、あるいは金利が上昇すれば、消費者の購買能力が下がって価格上昇についていけなくなり、需要が減ってくるのではないでしょうか。

十文字氏 バブル崩壊以降、土地やマンション価格は大幅に下がって、家賃並みの負担で買える水準になり、現在もそれに近い水準です。しかも景気が回復して企業の業績も向上し、大手メーカーを中心に労使交渉で賃上げ要求に対して“満額回答”が出るケースが増えるなど、給料も上がる傾向にありますね。購買能力が上がることで、ある程度の価格上昇は吸収できるでしょう。

 また、大手デベロッパー各社が09年にかけてマンションの新規供給を大幅に増やすという新聞報道も目立ちます。裏返せば、2年先までは金利はそれほど上がらず、購入できる層も多いだろうという読みではないでしょうか。
外資系ファンドの動きが今後の鍵を握る
--では、少なくとも1〜2年、長ければそれ以上は地価上昇が続くということになりますか。いつ頃、あるいはどういう状況になると歯止めがかかるのでしょうか。

十文字氏 十文字氏 今回の地価上昇の火付け役となったファンドの動きから考えてみましょう。ファンドというのは、投資家から資金を集めて不動産や証券などに投資して、収益を配当することで成り立っています。一般投資家は他の金融商品と比較して、ファンドのほうが数%でも利回りが高ければ投資するわけです。

 したがって、前述のような投資利回りと長期金利とのスプレッドが一定程度あればファンドに資金は集まり、不動産への投資が続き、地価も右肩上がりに進むでしょう。しかし、地価や物件価格が上がり過ぎて利回りが下がったり、長期金利が上がったりして、スプレッドが大幅に縮小すれば、投資を手仕舞いして資金を引き上げるようになると思います。


 キャピタル・ゲイン(値上がり益)を織り込めば、少しくらい利回りが下がっても投資意欲はなくならないとはいえ、地価は永遠に上がり続けるわけではありません。最終的に誰かが“ババ”を引き、前回のバブル崩壊と同じ現象が起こるおそれは十分に考えられるわけです。
 それが何年後かを予測するのはなかなか難しいですね。やはり、利回りやスプレッドの水準を注意深くウォッチングしながら判断するしかないでしょう。

--前回のバブル崩壊の直接の引き金は、不動産向け融資の総量規制だといわれています。今回は、そういった政策的な歯止めはかけられるのでしょうか。

十文字氏 金融庁が銀行の不動産向け投融資について監視を強化するといったアナウンスは出ていますね。ただ、前回のバブルでは、銀行やノンバンク、農協などの国内の資金が不動産に流入していたので、総量規制による金融引き締めが効いたわけです。今回は、外資も含めたファンドの動きを反映しています。世界中から資金が集まっているわけですから、それを規制するのは難しいのではないでしょうか。
 日本の地価動向も、グローバルな視点から考える必要が出てきたといえるでしょう。


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