


不動産コンサルタント
1960年東京生まれ。学習院大学経済学部卒。大手住宅メーカー、不動産コンサルティング会社などを経て、96年に不動産と相続のソリューション企業、財営コンサルティング(株)を設立、同社代表取締役。一般消費者向けから法人向けサービスまで幅広く対応。一級FP技能士(厚生労働省認定)、CFP(R)(NPO法人日本FP協会認定)。著書に『遺言書は書いてはいけない』『不動産でハッピーリッチになる方法』(いずれもダイヤモンド社)、『東京のどこに住むのが幸せか』(講談社)など多数。
財営コンサルティング公式HP:http://www.zaicon.co.jp/
--将来性のある街の見方について伺ってきましたが、その街の中でどんな物件を選べばいいのでしょうか。やはり、最近問題になっている耐震性の高さなどが、第一のポイントになりますか。
山崎氏 耐震性と資産価値の間には、直接的な因果関係はありませんね。改めて資産価値を定義しておくと、「流動性(換金性)」と「収益性」の2つの要素で決まります。つまり、どれだけ高く「売れるか」または「貸せるか」だけです。この点から考えると、必ずしも耐震性が高いことが、イコール資産価値が高いことにはなりません。

仮に都心の一等地に、築年の古い賃貸マンションがあるとしますね。建物はボロボロで、設備仕様も古くて性能も低い。品質がもっとも重要なら、資産価値が低いことになる。ところが、不動産業者はこういう物件を競って仕入れようとします。なぜなら不動産業者から見れば、へたに頑丈でないほうが立ち退き交渉の理由が明確で解体もしやすいため、流動性が高いからです。
住む上では建物の品質が良いに越したことはありませんが、資産価値という観点から見れば、品質は必要条件でも十分条件でもないのです。
--では、個々の物件に資産価値があるかどうかを判断するには、どんなポイントをチェックすればよいのでしょうか。
山崎氏 よく「マンションのチェックポイント30」といったリストを挙げているハウツーがありますが、エリアや主要な入居者層との関係を抜きにして、ポイントだけを羅列しても意味がありません。
重要なのは、その不動産が「最有効利用」されているかどうか。これは不動産鑑定の専門用語で、ある不動産がその立地に住みたがる層のニーズにもっとも適応した状態にあることを意味しています。言い換えれば、立地のポテンシャリティを最大限に発揮しているプランといえるでしょう。

たとえば都心の超高級エリアに、70m²で3LDKの庶民的なマンションを作っても最有効利用とはいえませんから、高い資産価値は生まれません。
欧米系のパワーエリートの家族向けなら、3ベッドでも専有面積は最低180m²程度は必要ですし、複数のバスルーム、洗面ボウルが欲しい。空間のボリューム、内装のグレードも含めて、アッパークラスが満足する居住空間があって初めて資産価値が成立すると考えて下さい。
--前回の話に出ていた「明るい下町」にも最有効利用はあるのですか。
山崎氏 もちろん、下町エリアには下町エリアの最有効利用の状態はあります。
--それぞれの地域の最有効利用の状態を知るには、どうすればいいのでしょう。
山崎氏 細かい条件などについては、それぞれの街に住みたがる層のライフスタイル、好みを分析しないと正確にはいえません。マーケティングに加えて、想像力と感性が問われる部分ですね。
ある程度のイメージをつかみたいなら、その街で一番高い価格や賃料で取引されているマンションのプランをよく見て勉強することです。
新築の場合、真新しさから一時的に高く取引されることもありますから、まどわされるおそれがあります。ある程度の築年数がたった中古マンションを見ることがポイントでしょう。
--将来性のある街で、最有効利用の状態にあるマンションを選べば最強ということですね。
山崎氏 はい。ただし、不動産の資産価値がもっとも極大化された「最有効利用」の状態は、時代や環境によって変わることに注意してください。特に、都心の一等地で都市文化の先端を行く街ほど、変化のスピードが速いのです。

たとえば、築30年の標準的な賃貸マンションの賃料が、新築の賃料に比べてどのくらい低減しているかを調べたところ、立川では15%の減価にとどまっているのに対して、広尾は35%も減価していました。一般的には、賃料水準の高い街ほど、経過年数による減価率も小さくなる傾向があるのですが、広尾の場合は賃料が高いにもかかわらず、賃料減価率が非常に高くなっている。
その理由は、ニーズの変化が速いために、過去に建てられたマンションが街の進化に追いついていないからだと思います。
--つまり、「最有効利用」からずれている可能性があると。
調査の対象にしたのは通常の賃貸マンションですから、現在の広尾に住みたい人にとってはプランが陳腐化してしまい、ニーズに合わなくなっているわけです。
資産価値がサスティナブルであるためには、時代や環境の変化に合わせてリノベーションをする、つまり再生して常に「最有効利用」の極大化を図る必要があります。それが可能な不動産だけが生き残れるのです。
(了)